これまでの軌跡

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簡易HA/DR

今回ご紹介するのは、2009年2月にサービスインした開発事例です。

実際の事例を紹介する前に、今回のお客様の背景をお話しておかなければなりません。

このお客様の数あるサービスのひとつに、「顧客である各マンションを24時間・365日、間断なく警備・保守する」というものがあります。今回の対象システムはこのサービスをバックエンドで支援するものですので、必然的にシステムは停止することができません。初代のサーバー選定は約10年前にさかのぼりますが、そのときに最優先課題とされたのが「絶対にとまらない(故障しない)サーバー」であることでした。そこで白羽の矢がたったのが「IBM i (AS/400) 」でした。選定理由は当時のプロジェクト・マネージャーご自身が「IBM i (AS/400) 」の前身機にあたる「System 34」の使用経験があり、体験に基づく信頼を寄せられていたこと。そして客観的には、日経コンピュータの顧客満足度調査でトップにランクされていることでした。そして7年間の使用期間を経て、そのことは見事に実証されました。現在は後身にあたる IBM i (AS/400) が二代目として活躍しています。


お客様の要望

IBM i (AS/400) が信頼性も可用性もとても高いことは実績が証明していますが、それでも使い続けるためのシステムメンテナンスは必須となります。また今までは幸いにして起こりませんでしたが、万が一の有事の場合にも可用性を確保する必要性が求められます。定期的なシステム切り替えがいつでも行え、かつホットスタンバイとしても活用できるように設計してほしいというのが、今回のお客様の要望でした。

この条件を満たすための解決策はいろいろ考えられますし、それを実現するための実績のある素晴らしい製品も数多くあります。しかし、お客様としては「HA/DR製品を検討したが、いずれも高機能であり、そこまでの機能は必要でないし費用も捻出できない。」とのことでした。

当社は受託開発を長くやってきており、お客様の要望する機能を過不足なく提案および実現してきたという自負がありますので、今回の要望も厳しいものではありましたが、お受けすることにしました。

具体的なお客様の要望は大きく次の2点です。

  1. 東京(本社)~大阪(支店)間において、本番機として本社側にSystem i 525、ホットスタンバイ用として大阪側にPower Systems 520 M15マシンを配置
  2. 二地点間においてデータの同期を行い、いつでもマシンを切り替え可能な状態にする

設計

実はもともとこのお客様の基幹システムを構築した担当者がすでに構想を持っていたため、基本設計についてはそれほど時間を要しませんでした。仕組みの基本は、リモートジャーナルを利用した遠隔システムへのデータバックアップ(リアルタイム同期)です。今回の開発のポイントは出口点プログラム(EXITPGM)でしょう。このプログラムを利用することによりほぼリアルタイムでのデータ同期を実現することができました。

HA/DRを真に実現するためには、データだけではなくオブジェクトの同期も当然必要になるのですが、今回のお客様に関して言えば、すでにシステムが稼動して10年弱を経過しており、プログラムの改訂もほとんど行われることなく良い意味で枯れたシステムでしたので、データの同期のみで十分との点で合意を得ることができました。

簡易HA/DR
開発(実装)

実際の開発は設計が明確だったために、いわゆる力仕事で頑張るところが多く、大きな問題もありませんでした。

今回の開発のポイントは出口点プログラムと書きましたが、この出口点プログラムはシステム・コマンドを扱う場合などによく登場するものです。今回作成したのは、RCVJRNEコマンドに指定するもので、コマンドのEXTPGMパラメータに指定します。主な機能はリモートジャーナルで受信しジャーナルレシーバーに保管されたジャーナルエントリーを取得し、データベースに書き出すというものです。今回の開発では、この出口点プログラムの検証が重要な鍵となりました。もちろんシステムを切り替えるときに必要なその他の仕組みも重要ですが、まずはデータベースの変更が確実にかつ正しくデータベースに書き込まれなければなりません。

とにかく、色々なケースを想定してこの出口点プログラムの検証に多くの時間を費やしました。実際の開発はベテランSE1名と、入社2年目のSE2名。入社2年目のSEは、今回の開発で通常の基幹業務アプリケーションとは違った観点で、IBM i (AS/400) の奥深さを味わったことでしょう。彼らには少しばかり荷が重かったかもしれませんが、この手のシステム開発にめぐり合えたのはとてもラッキーなことだったと思います。


リリース

こうして2008年12月~2009年2月までの3か月の開発期間でシステムが完成し、無事リリースを迎えることができました。開発の遅れもなく、現在はお客様も安心して運用されております。


お客様からの要望を実現するため我々は様々な角度からソリューションをご提案させていただきます。
お一人で悩まずに我々に是非ご相談ください。